プラチナ鉱山の利権を狙ってアフリカの小国にクーデターをしかける資産家と傭兵たちの陰謀を描いた軍事スリラー。物語の根底にあるのは当時のアフリカの救いようのない現実。
プロローグ.......。
アフリカで仕事を終えた傭兵達を回収した飛行機にて。傭兵たちの足下には同乗した四十人の栄養失調の幼児たちが、異物にまみれ、異臭を放ちながら包みから放たれた。
「五人の傭兵達は、ちらっとそれを見やった。それは今まで飽きるほど見てきた光景だった。五人とも嫌悪の胸をふたがれたが、だれも顔には表さなかった。人間はどのようにむごたらしいことにも結局、慣れてしまうのだ。コンゴでも、イエメンでも、カタンダでも、スーダンでも、いつも同じことが起こり、いつも子供たちが犠牲者だった。そしていつも、どうすることができないのだ。傭兵達はめいめいそう考えて、煙草を抜き出した」
アフリカ西部の小国、サンガロ共和国で鉱山の調査を行っていたイギリスの大資本、マンソン鉱業は偶然、プラチナの大鉱脈を発見する。マンソン鉱業会長ジェームス・マーチン卿は巨大な利益を生む、その利権を独占すべく、恐怖でサンガロ共和国を支配するキンバ政権を転覆させ、意のままとなる傀儡政権をつくることを画策する。その軍事クーデターを実行する人選で選ばれたのが、勃発していたアフリカ各地の分離・独立紛争で名を馳せた傭兵キャット・シャノン。巨額の報酬で依頼を請け負ったシャノンは名うての傭兵4人を集める。綿密な計画のもと作戦を実行すべく、武器弾薬、輸送船、戦闘要員の調達に奔走する五人の犬たち。作戦が開始されてから百日目。「黎明の殺戮」。シャノンの部隊はサンガロを急襲、独裁者キンバを殺害し、放送局を含めてサンガロを制圧。マンソン社が仕立てた新しい支配者、ボビ元大佐(キンバとの聞くに堪えない権力闘争に敗れて亡命していた)が現れた時、サンガロ、そしてアフリカの惨状を知るシャノンは驚く行動はとる。
著者のフォーサイスはロイター通信社と英BBCに在籍時に1967年のビアフラ戦争を取材し、当時の惨状に接して、映画化もされた自身の処女作「ジャッカルの日」で得た莫大な印税を原資に、アフリカの小国(赤道ギニア共和国)に対し、ビアフラ難民を救済すべく実際にクーデターによる政府転覆を図った。この本はそのフォーサイスの実体験が原型とされている。
カーロ・アルフレッド・トーマス・シャロン。名前のイニシャルをつないでCATシャノンと呼ばれるブロンドの髪を短く刈り込んだアイルランド出身の三十三才の傭兵。
シャロン、あんたに救われた人は百人なのか、千人なのかわからないけど間違いなくいるぜ。キャット・シャロン。仕事以外の特技、女のたらし込みとスパニッシュ・ハーレムの口笛。
(旧ブログよりtext copy)