ジュリアナ東京が社会現象と化し、女子高生のルーズソックスが大流行した1990年代初頭。そんな時代のうねりの中、ある男が意中の相手を射止める寸前、調子にのって天国から地獄に落とされると言う小さな事件が横浜の片隅であった。
「キャベツ事件」などと言われていたこの事件。
関係者たちは秘密厳守を申し合わせる承諾書にサインし堅く口を閉ざして多くを語ろうとしない。だが、この「キャベツ事件」にかかわった主要な当事者の多くはそれにサインしておらず、キャベツについて進んで語ってくれた。バブルの香りが残る夏のある日。あざみ野のお好み焼き屋で起きた、あの驚くべき事件のことをー。
■主要登場人物
・キャべ男=キャベツ男
・リナ=バレリーナ
・エス=キャベ男の友人
●プロローグ/出会い
「毎度!」キャべ男は取引先のミニクラブへ営業。Cと言うこのミニクラブは横浜と川崎の境の近くにある。発足したばかりのJリーグの当時の主要なチーム「川崎ベルディー」や「横浜マリノス」の主力選手たちも、近所に住んでいた事もあり頻繁に遊びに来ていたようだ。
酒好き、女好きのキャべ男。開店前の準備をしているスタッフの女の子といい調子で軽口を叩いていたら、見かけない一人の女の子と目が合った。
「あっ・・」キャべ男、ビビっと来る。相手もビビッと来ているのがわかる。二つの鏡を平行に合わせたように互いに同じを事を考えているのがわかる瞬間。
細みで笑顔がかわいい、リナと言う名前のバレエをしている女の子。
キャべ男30才、リナ21才。
●第一反復/電話
サラリーマンから独立。もがきながらも酒の商売が軌道に乗りはじめ、調子に乗るキャべ男。30過ぎても身を固めるつもりが全くない。そんなキャべ男の頭からリナが離れてくれない。「得意先との色恋ざたはイヤなんだよな〜」と思いつつも日に日にリナの存在が大きくなっていく。
ある日、誰もが経験する「断られたらどうしよう・・」「この時間に電話しても大丈夫かな?」「オヤジさんが出たら何て言えばいいんだろうか?」と次々と襲って来る不安を振払い、初めて会った時の感覚を信じながら交換しあった電話番号に電話をする。
キャべ男「もしもし・・」
リナ「もしもし・・。あっ、」
キャべ男「この前はどうも。」
リナ「この前って?」
キャべ男男「いや、仕事の邪魔して悪かったって言うか何て言うか・・」
リナ「・・・」
キャべ男「今度の土曜日、国立のヴェルディーとマリノスのチケットがあるんだけど行かない?」
リナ「もしかしてデート?」
キャべ男「そうとも言うかな」
リナ「・・・」
キャべ男「いや、無理ならいいんだけど。ゴメン。」
リナ「ううん、行く・・。うれしい・・。」
やったぜ!!!
●第二反復/楽しい日々
キャべ男とリナの楽しい時間が過ぎる。リナはうれしそうに仕事のバレエの話しをする。キャべ男はリナが楽しそうに話しをする様が大好きだ。キャべ男のあざみ野のアパートの近くにあるバーでの出来事。カウンターごしに若いバーテンダーが「卵焼きのオムライスをつくりましょうか?」と言う。キャべ男とリナ、二人で目を合わせて「卵焼きのオムライスって?ただのオムライスじゃん!」腹を抱えて笑う二人。楽しい時間が過ぎる。
●第三反復/凪と嵐
例によって楽しい時間も時と共に慣れになる男と女。なぜあんなに惚れあった最初の気持ちがなくなるのだろうか?キャべ男は毎度のパターンでリナからの電話の対応が雑になる。「あ〜あ〜、わかったまた電話する」。リナがうれしそうに話しをするのがあれほど好きだったのに・・。商売もこれから、ここがふんばり所とリナを後回しにしたキャべ男。遂にリナの誕生日まで忘れてしまった。さすがに鈍感なキャべ男もこの時ばかりは自分のした事の重大さに気付き落ち込む。あざみ野のお好焼屋で飲みながら状況を挽回としようと目論む。行列のできるお好焼屋。待ち時間も久しぶりに会う二人にとっては楽しい時間だ。キャべ男はリナが自分と同じ事を考えているのがわかる。食事の後二人は結ばれると・・。
●第四反復/修羅場
つづく。
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