2016/06/05

現行憲法と自民党改正草案(2012年4月27日発表)

仕事絡みで現行憲法と自民党の改正草案を比較する機会があった。

全編に渡って国民主権を否定して国家ありきと感じる。現首相は任期中に実現させたいようだけど、それが結果として我々の子孫にとってよいのか?日本の将来より任期中の改憲を重視する現首相の元でやることではない。

 自民党の憲法改正草案がいかんと思う主な点、四つについてまとめてみた。

  戦争の放棄/安全保障(現行憲法9条)

  国民の権利及び義務(現行憲法12条)※表現の自由について

  最高法規(現行憲法97条)※日本国民の基本的人権について

  緊急事態(現行憲法記載なし)

 

(以下要点)- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

  戦争の放棄/安全保障(現行憲法9条)について

(現行)
  日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。検閲はこれをしてはならない。通信の秘密はこれを侵してはなない。

  前項の目的を達するため陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権はこれを認めない。
 
(改正草案)
  日本国民は正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

  前項の規定は自衛権の発動を妨げるものではない。

2.国防軍
① 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。

② 国防軍は、前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。

③ 国防軍は、第一項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。

④ 前2項に定めるもののほか、国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める。

⑤ 国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない。

よく見聞きする「憲法9条」。現行憲法は「陸海空その他の戦力を保持しない」とあり確かに今の自衛隊が認めていない。震災が多発する日本に於いて自衛隊はなくてはならない存在となっている。ならば、この文言を一部変えればよい。しかし、自民党改憲草案は現行憲法と同じく「武力を国際紛争の手段として用いない」としているが以下の但し書きが付く。
→ 「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない」
自衛権に関して、集団的、個別的の記載ない。
又、9条に2項「国防軍」の規定を追加し、国防軍(現自衛隊)の名称を変える必要と任務の拡大、「国際的な協調して行われる活動」や「公の秩序の維持」を憲法に追記する必要があるのか?



  国民の権利及び義務(現行憲法21条)※表現の自由について

(現行)
   集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由はこれを保障する。

② 検閲はこれをしてはならない。通信の秘密はこれを侵してはなない。

(改正草案)
  集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由はこれを保障する。

  前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは認められない。

  検閲はこれをしてはならない。

1項の「表現の自由」について2項「公の秩序を害すること云々」。公の秩序の規定はない。実質的に表現の自由を制限している。又3項「通信の秘密を侵してはならない」を削除している。


  最高法規(現行憲法97条)※日本国民の基本的人権について

(現行)
この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

(改正草案)
・・・・・・・・・・・削除

条文の表題通り、現行憲法の上位に位置する日本国民の基本的人権に関する記述。改正草案で一切削除している。国民主権を否定しているのか?基本的人権を否定しているのか?何故?


  緊急事態(現行憲法記載なし/改正草案98条)

現行憲法に記載はなく、改正草案で新しく加えられた条文。「緊急事態」を宣言したら、立法(国会)、司法を超えて全権が内閣に集中し、極端に言えば国会を通さずに法律を内閣がいかようにもできる。

震災、外部からの武力による侵略による緊急事態はわかるが、法律の範囲で対応可能ではないか?要は「はい、そこは危ないから立ち入り禁止」と法律や条例で定めれば、皆従うのに何故憲法で定めなければいけないのか?

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特段支持する政党、宗教もないし、ある種のデモに参加したいとも思わない。

ただ、昭和元年生まれで二十歳で終戦をむかえたオヤジが飯時によく戦時中のことを言っていたのを思い出す。食い物のエピソードが多かったが(「白米が最高の楽しみ」「バナナを食い惜しんで机にしまっておいたら腐った」など)、そんな中でも大本営を信用してはダメだ、要は「権力を集中させてはならない」みたいなことを言っていた。

政権を運営する能力は、確かに自民党がよいと思う。一時の何も決まらない、進まない政治はよくない。でも、自民党が目指す改憲勢力を2/3にすることは権力の集中を招く。

政治的な意見や思想は自由でいい。日々のことに追われて、政治のことを後回しにしたり、選挙する権利を放棄しがちだけど、とにもかくにも選挙に行き、投票率が上がればずいぶんと政治が変わると思う。
 

 

 
 
 

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